DCF法におけるTVの計算方法の代表的なものとして、永久成長率法とEXITマルチプル法が挙げられます。今回はこれらのうち、永久成長率法について説明します。
永久成長率法とは、事業計画期後のFCFが一定の成長率で増加するとの仮定を置き、TVを計算する方法です。具体的には、以下の計算式によりTVを算出し、事業計画期のFCFの現在価値に加算することで事業価値を算出します。
■事業計画期のFCFの現在価値
X+1期 | X+2期 | X+3期 | 合計 | |
FCF | 100 | 120 | 130 | |
現価係数 ※ | 97.590% | 92.943% | 88.517% | |
FCF(現在価値) | 98 | 112 | 115 | 324 |
※ WACC=5.00%と仮定して計算。なお、算出に際しては期央主義(FCFが各期の中間点にて発生するという仮定)を採用している。
■事業計画期後の価値(TV)
TV=(FCF【130】×(1+成長率【1%】)/(WACC【5%】-成長率【1%】))
×現価係数【88.517%】
TV=2,906
※1. X+3期後は、X+3期のFCFが毎期1%で成長するものと仮定しています。
※2. WACC=5.00%と仮定して計算しています。
■事業価値
事業価値=事業計画期のFCFの現在価値【324】+TV【2,906】
事業価値=3,230
永久成長率法によるTVは上記2で記載した算式にて算出することができます。今回は、この算式の導出過程についても見ていきたいと思います。
TV=FCFX+3期×(1+g)/(1+WACC)3.5+FCFX+3期×(1+g)2/(1+WACC)4.5+…
…+FCFX+3期×(1+g)n-4/(1+WACC)n-1.5+FCFX+3期×(1+g)n-3/(1+WACC)n-0.5 …①
※1. FCFX+3期は、X+3期のFCFを示しています。
※2. gは、成長率を示しています。
<両辺に(1+g)/(1+WACC)を乗じる。>
TV×(1+g)/(1+WACC)=FCFX+3期×(1+g)2/(1+WACC)4.5+FCFX+3期×(1+g)3/(1+WACC)5.5+…
…+FCFX+3期×(1+g)n-3/(1+WACC)n-0.5+FCFX+3期×(1+g)n-2/(1+WACC)n+0.5 …②
<①から②を引く。>
TV-TV×(1+g)/(1+WACC)=FCFX+3期×(1+g)/(1+WACC)3.5-FCFX+3期×(1+g)n-2/(1+WACC)n+0.5
<両辺を整理する。>
TV×(WACC-g)= FCFX+3期×(1+g)/(1+WACC)2.5-FCFX+3期×(1+g)n-2/(1+WACC)n-0.5
<ここで、WACC>gかつn→∞より、FCFX+3期×(1+g)n-2/(1+WACC)n-0.5=0となる。>
TV×(WACC-g)= FCFX+3期×(1+g)/(1+WACC)2.5
<両辺を整理する。>
TV= FCFX+3期×(1+g)/(WACC-g)×1/(1+WACC)2.5
※ 1/(1+WACC)2.5は、X+3期の現価係数を示している。
以上が、上記2で用いた永久成長率法の算式の導出過程となります。